辺境の奇譚紀行

ちょっと変わった地域のどうでもいい情報を発信

夢のアムール越え4日目①ブラゴヴェシチェンスク→黒河

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駅の内側から記念撮影。ホーム側はブラゴヴェシチェンスクと書いてあるが、表には駅(Вокзал)としか書いていない。

ホテルを追い出される

いよいよメインイベント、アムール越えの日がやって来た。情報が少ないので無事に出入国できるのかが1番気になるところだ。もともと早めに港へ行こうとは思っていたが、8時頃ホテルの人から早くチェックアウトする様に急かされる。前日、8時前にチェックインしているので、滞在が24時間以上になって割増料金が発生するというのだ。

仕方ないのでホテルを出て駅のカフェで朝食をとる。ビュッフェ形式になっていて指さし注文で便利だが、副菜にイモだと思って選んだのがカーシャ(粥)だった。最後のロシア料理だったのにちょっとがっかりして前日に確認したバスに乗って港へむかう。

ついに決戦の時がせまる。

立ちはだかるロシアの壁

前日、港に来た時にどこかに船の時刻表があったのかもしれないが、よくわからなかったしホテルも追い出されたので港へは10時には到着していた。

まずは船のチケットを買いに行く。気休めかもしれないが2つ開いていた窓口の比較的やさしそうな予感がした方に並ぶ。パスポートの提示を求められ「日本国」をそっと差し出す。窓口のお母さんの動きがとまった。何言っているかわからないがパスポートをめくりながら隣の人にすごい相談している。

「ちょっと、中国のビザがないみたいだけどどこにあるの?」

「ジャパニーズ ノー ビザ!ノープロブレム!」

私は英語がほとんど分からないが即答で叫んでいた。普段使っていない脳が一瞬でフル活用されてひねり出された。この英語で正しいのかわからないが、通じたみたいで「まいっか」という感じでようやく船券を手に入れることができた。やっぱり人間追いつめられるといつも以上の能力が発揮されるものだ。

私は何回か中国へ旅行してるので、最終的に以前の中国入国スタンプを見せて「ほらいつも中国のビザないけど入国できてるでしょ」と説明する作戦も思いついたが、ロシア語でも英語でも説明できないのでとりあえずは助かった。しかし、まだチケットを買っただけである。

出国審査の入口もよくわからないので、チケットを買っていたロシア人の後について行くと、今度は軍だか警察だかの制服を着た人がパスポートチェックをしている。

購入したばかりのチケットとパスポートを渡すと、また「あれ?」という感じで手が止まって「ハバロフスクから来たの?」と聞かれたので「ダー」と答えてそのまま通過。他には何も聞かれなかったので気をよくして薄暗い階段を上がっていった。

謎の待ち時間

階段を上がるとだたっ広い無機質な待合室の端にゲートがあり、中国人が20人ほど、ロシア人が違う列で5,6人ほど並んでいた。ゲートはロシア人のおっさんが封鎖していて、数人づつ通している。

だいたいどの国も出国審査は本国人と外国人にわかれているが、まだ出国審査場でもなく何も書かれていないのでどっちに並べばいいのかよくわからない。とりあえず近くの中国人に聞いたら後ろに並びな、というので列の最後に並んでみた。

しかし、並んでみても一向に列が進まず、ロシア人ばかり通している。職員らしいロシア人のおっさんは中国人の列が少しでも乱れたり前に出ようとするとイントネーションのおかしい中国語で「並べ!」と叫んで、殴るくらいの勢いで押し戻す。正直言って中国の駅とかでは列車に乗るのに殺伐とした雰囲気になるけど、ここではみんなそこまで押し合いもしていないのに、少しでも列が乱れるとおっさんに怒られるのだ。

そもそも全然通してくれないので、もしかしてみんな団体とかなのかと思って「なんで全然こっちの列は進まないの?」と聞いたら「ここはロシアだからロシア人が優先なんだよ」と言われた。

きちんと出国できるかどうかわからないのに中々先に進めないので無駄に疲れる。私が購入した船券はロシアの船(だと思う)ので、もしかしたらロシア人の列で進めるんじゃないかと思ったが、おっさんに何か言われたり出国審査でもめたら誰かに通訳してもらいたいのでそのままおとなしく並んでいた。ちなみにおっさんの所行にはみんなうんざりしており、いつの間にかパイドゥイ(排隊:並べ)とあだ名をつけられて呼ばれていた。

そんなこんなで並んでいた時間は4時間。もしかして船便とかの関係でもっと遅く来ても待ち時間は一緒だったかもしれない。ただ私がついた時点で20人ほど待っていたので真相はわからない。

最後の難関を潜り抜ける

パイドゥイのゲートを抜けると、また軍関係者みたいな人にパスポートと船券をチェックされる。あっさり通されて手荷物検査等を行い、ついに出国審査へ。

もともとロシアの出入国は時間がかかるけど、予想通りパスポートをすっごい見ている。やっぱり中国ビザもとっておけばよかったのかと後悔する。他の人を呼んで何か確認しているだけでなく、電話までし始めた。ものすごく焦るけど、何も聞いてこないしどうしようもできない。

待っている時間は本当に永遠のように感じられたが、ようやく出国スタンプが押されてパスポートが戻ってきた。嬉しい!ニヤニヤしそうになるのを抑えてそそくさと待合室に向かった。ロシア人と中国人で込み合っていて、出航の時間もよくわからないがそんなのはどうでもいい。安心感しかない。

結局1時間ほど待合室で過ごして、遂に乗船した。

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 黒龍江からブラゴヴェシチェンスクを写す。向かいに写っているのが中国船。

出航してからはほんの10数分で中国側へ着く。数年間行ってみたいと思っていたブラゴヴェシチェンスクと国境越えだったが、正直行って港で悶々としながら数時間を過ごしていたので疲れ果ててしまった。ちなみにロシア船はとても空いていた。

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 中国国境。

短い船旅を終えて今度は中国の入国審査だ。場所は異なっても見なれた雰囲気の審査場にちょっとだけほっとする。やっとホームに帰ってきたという思いがする。(外国には変わりないけど)

パスポートを差し出すとちょっと時間はかかったものの、どこかへ電話されることもなくすんなり入国完了。安心して浮かれ気分でタクシーで駅へむかった。

 

情報は2013年6月のものです